「んじゃ、とりあえず俺んちに来い。」
「はい。」
リビングに戻り、MZDはLに声をかけた。
「最初からそうしていれば良かったのだ。」
「ユーリ!いくらなんでも失礼っスよ!」
フン、と鼻でため息をついたユーリを、アッシュがたしなめる。
ジャックとシエルは2人の足元を通り抜け、Lのシャツを引っぱった。
「・・・・・・。」
「ユーリ!Lをここに置いてくれよ!!」
「・・・んなっ・・・」
シエルの言葉に、ユーリはまたもや口元を引きつらせる。
子供2人はLを挟むように立ってシャツをつかみ、絶対離さない!という目でこの城の城主を見上げた。
「ヒッヒッヒ・・・ずいぶんなついてるみたいだねェ。」
「ははァ〜ん。だ、そうだが?」
スマイルとMZDは実に楽しそうだ。
Lは少し考え、ジャックとシエルの頭に手を置く。
「ワガママを言ってはいけませんよ。」
「やだやだ!!Lは俺たちと暮らすんだっ!!」
「・・・・・・!」
シエルはますます強くLの腰に抱きつき、ジャックもコクコクと頷く。
「ジャック、シエル、Lさんが困ってるじゃないっスか・・・こっちに来るっスよ。」
「やだっ!!!」
即答拒否に、アッシュの頭にヒビが入った。
部屋の隅でズーン・・・と沈むアッシュに、MZDの影がおろおろと近づいて肩を叩いている。
「ふぅ〜ん・・・キミ、エルっていうんだ。」
「はい。」
「ここで暮らすの、イヤ?」
「いいえ。しかし・・・」
ユーリと子供2人の間で、視線の火花が散る。
「〜〜〜〜〜。」
「ちゃんと留守番する!家の手伝いもするから!!いいだろ!?」
「オレもする・・・!」
「なんだか拾ってきた犬みたいだな・・・。」
MZDの声を頭の端で聞きながら、ユーリは2組のつぶらな眼と闘っていた。
最初は強気だったが、今はお願いモードになっている。
ここで怒鳴ったら・・・多分、泣かれる。
「こ・・・ここは私の城だ・・・!」
「ユーリはLのどこが気に入らないんだよっ!!」
シエルの声に、不覚にも体がビクリと震えた。
ちら・・・と、Lと呼ばれる男のほうへ視線を移す。
開きっぱなしの瞳孔が自分を捕らえていて、思わず後ろに下がりたい気分になった。
「ジャック、シエル。」
下に視線を落とし、名前を呼ぶL。
2人はユーリから視線を外し、Lを見上げた。
「あなたたちは、この人にお世話になっているのでしょう?」
Lの質問に、ジャックとシエルは頷く。
「だったら、ワガママを言って困らせてはいけません。
私はMZDのところに住まわせてもらいますから、そこへ会いに来て下さい。」
優しく頭を撫でられ、そう言われては返す言葉もなかった。
頭で理解できても、感情で納得できないらしく・・・シャツを掴んだ手は外されない。
Lはしゃがんで2人に目線を合わせ、また頭を撫でた。
「いい子ですね。」
薄く微笑むLに、2人はしゅん・・・となる。
今日一日居させてもらったことに礼を言おうと、Lが上を見上げるのと
ユーリが口を開いたのは同時だった。
「勝手にしろ。」
思いがけない一言に、ジャックとシエルも後ろを振り向いた。
ユーリは腕を組み、3人を見下ろしている。
「いいのか・・・?」
「勝手にしろ、と言っている。」
怒ったような、すねたような顔は、彼ができる精一杯の照れ隠し。
シエルはユーリに飛びつき、ジャックはLに飛びついた。
「ありがとっ!!ありがとなユーリっ!!」
「やめろ!!離せ!前が見えんだろうが!!」
「・・・とっても、いい人なんだ。」
「そうみたいですね。」
抱きついてきて、一言そうささやいたジャックを床におろし、Lは立ち上がった。
「ヒッヒッヒ!ボク、スマイル!透明人間!よろしくネvv」
「・・・Lです。」
2メートルほど離れた位置から、びよよ〜んと伸びた包帯の先についている手と握手をする。
少し、この世界の不思議に慣れてきた。
「ついでだからメシ食ってくか〜。おいアッシュ、いつまで沈んでんだよ。」
MZDのこえに、ハッと我に帰るアッシュ。
「はっ!へっ?なにがどうなったっスか!?」
「新しい同居人が増えたんだヨ。」
「そ・・・そうなんスか?」
自分の方に顔を向けるアッシュに、Lは小さく会釈した。
「Lです。」
「あ、どうも・・・俺、アッシュっていうっス!んで、こっちは・・・」
「吸血鬼のユーリだ。」
引きはがしたシエルを、ポイッと床に放り投げながら、不機嫌100%の表情で名乗る城主。
「ジャック、シエル、客人の部屋を用意しろ。アッシュ、早く食事を作れ。」
指示を出すユーリに、ジャックとシエルは一目散にリビングを出て行き、
アッシュはビニール袋を手に、キッチンに駆け込んだ。
「俺の分も頼むぜ〜!」
「貴様に食わせる飯はない!」
1人、ソファーに座ってくつろぎモードのMZDに、容赦ない一喝が飛ぶ。
「なんだよーケチケチすんなよな〜。」
「早く帰れこの疫病貧乏神。」
「うわ!お前それひっでェな!!」
「ねーねーそれじゃねー、ロケットパンチは?」
「出ません。」
その日のユーリ城のリビングは、
遅くまで明るい笑い声に包まれていた。
こんなにお客人の反応が怖い小説を書いたのは初めてだ・・・(汗)
いや、ビクビクしすぎなんでしょうか。
どうなんでしょうか・・・。
やっちゃいけないことをやっちゃった気分です;;
とりあえず、ジャックとシエルはLにホレてしまったようです(笑)
や、Lにホレてしまったのは私です(爆)
感想&意見、切実にお待ちしております!
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