あわただしく廊下を通りすぎる、足音。





「ユーリ!!ちょっとどこ行くんスか!!!ツアーの準備、まだ終わってないっスよ!?」
「気になるならお前も来い。」


スタスタと足早に歩くユーリの後ろから、アッシュが機材が入ったダンボールを持ったまま走ってくる。


「そ、そういうことじゃないっス!!」
「ねェねェ、さっきの電話、誰からだったのン?」
「って、スマイルまで抜け出してきちゃったんスか!?ああもぉ!!」
「五月蝿いぞ犬。」
「狼っス!!」


ぎゃあぎゃあ騒ぎながら廊下を進む3人組を、現場スタッフたちは呆れ顔で見送った。
何度呼んでも足を止めようとしないユーリに、アッシュは大きなため息をつく。


「もー・・・打ち合わせの続き、今日やらなきゃ一体いつやるんスか・・・」
「どうでもイイけど、アッスくん、そのダンボール持ってきちゃって良かったの?」
「‡狽 ああ!!良くないっス!!全然良くないっスよ!!!」
「ヒッヒッヒッ!早く返してきなヨー♪」


持ってきたダンボールを両手で抱えながら、
スタジオに戻るかユーリの後を追うか、その場でうろうろ行ったり来たりするアッシュ。
スマイルは笑いながら、だいぶ先を歩いているユーリに駆け寄った。


「ねぇユーリ、ホントにどこ行くの?」
「ついてくれば分かる。」


廊下の角を曲がったところで、アッシュが追いついてきた。


「はぁ、はぁ・・・もう、2人とも、歩くの、早いっスよ・・・」
「あれ?ダンボールは?」
「俺たちの、スタジオに向かうスタッフさんに、渡してきたっス・・・」
「着いたぞ。」


ユーリが足を止めたのは、予備の小さなスタジオ。


「え・・・ここ、今回使う予定でしたっけ?」


アッシュはきょとんとしながらも、さっさと中に入っていくユーリとスマイルの後を追った。




























真っ暗な闇の中で、青い照明だけがついている。
しばらくして眼が慣れてくると、きっちり整頓された機材が、照明に照らされて青く浮かび上がってきた。
まるでライブ会場のドームのように設定されたスタジオの奥で、ごそごそと誰かが作業しているのが分かる。


「おーぅ!仕事中に悪いなユーリ!
 あれ、アッシュとスマイルも一緒なのか?」
「・・・え、MZD!?」


軽く手をあげて挨拶したのは、見慣れた帽子とサングラス。
神のことを指差してアッシュは驚いた声を上げる。


「な・・・なんでMZDがここにいるんスか!?
 確か、ポップンパーティの準備でホワイトランドに行くって、昨日のニュースで・・・」
「ああ、あっちは全部ヤモリにまかせてきた。」
「MZDって、相変わらず人使い荒いネ・・・ヤモリに同情するヨ・・・」
「ま、詳しい話はあとだあと。その辺に座れよ。」


そう言ってMZDが示した先には、折りたたみ式の椅子が5、6個並んでいた。
その中のひとつに、ユーリは既に腰を下ろしている。
言われるまま、アッシュとスマイルも、近くにあった椅子を引き寄せて座った。

MZDは、もう1つ2つ何かを確認すると、
ユーリたちが座っている方の反対側に設置してあるボックスに上がった。


「よぉし。んじゃ、いっちょ行ってみっか!」
「イェーイ!!待ってましたっ!!」


ボックスの上から陽気にかけられる声に、スマイルが元気に応える。


「ユーリ、一体これは・・・」


アッシュがなにか言うのをさえぎり、それは始まった。














低く響くドラム。

もやのような電子音の上に降りかけられる、クラッシックギターのメロディー。

呆然とする間もなくスタジオに注がれたのは、よく知っている歌声。



(これは・・・「Cry Out」・・・?)



アッシュは、ボックスでたくさんのボタンを前に、せわしなく手を動かしているMZDを見た。
視線に気づいたのか、不適な笑みを浮かべる神。



ボックスの横に設置されたスピーカーから、惜しみなく放たれる音。

まるで心臓の鼓動のような重く響くバスドラムを基盤に、ユーリの声を殺さず、包み込むような旋律。

アナログ音とデジタル音が交差し、柔らかな余韻を引きながら溶け合っていく。



耳につけた大きめのヘッドフォンから流れるリズムに身を任せながら、
サビに入る前の間のスキを見てスクラッチをすべりこませ、傍らに置かれたキーボードに指を躍らせる。
無意識のうちに、全神経が指先と耳に集中していくのを感じながら、MZDは軽く目を閉じた。

・・・あの日がよみがえる。




冷えていく温度。
あせていく色。
失われる命。
消滅する存在。


残された青年の心。

悲鳴。いいわけ。怒号。命乞い。名前を呼ぶ声。



叫ぶ。

何度も。
何度も。
何度も。



雨。
鳥の羽ばたき。









涙。



























































パチパチパチパチ。




「・・・・・・っ!」




スタジオの中は白い光りに溢れていた。
曲が終わり、連れて来た影が照明の電源を入れたのだろう。

唐突に響いた拍手の音で、MZDは我に帰った。
顔を上げると、スマイルが立ち上がって手を叩いている。
同じようにぼんやりしていたらしいアッシュも、あわてて手を叩く。


「スゴイ!!綺麗なアレンジだねェ!!」
「ええ本当に!!同じ曲なのに、こんなに雰囲気が変わるものなんスねぇ。」
「・・・おう、サンキュ。」

2人の反応からすると、曲の出来はまぁまぁのようだ。
あとは・・・。


「・・・・・・。」


ユーリは、眼を閉じていた。
MZDはアッシュとスマイルに肩をすくめてみせ、少し歩いてユーリの前に立つ。





「・・・どうよ?」





MZDの声に、ユーリはゆっくりと眼を開けた。


「・・・・・・。」
「気に入ったか?」



得意そうに笑う神。
その横で微笑む、仲間。













































それに救われている自分がいるのは、夢なんかじゃない。



























































「・・・ありがとう。」































































「あ!MZD!やっと来た!!」
「おう、司会の準備ご苦労さん。これCMの撮影で合ってるよな?」
「合ってる合ってる!!って言うか来るの遅いよー!!みんな待ってるんだから、早く挨拶しちゃってよね!!」
「ハイハイ分かったよ、そんなに怒るなって・・・あーコホン。
 
 よォ!!みんなポップン楽しんでるかー!?
 おかげさまでポップンパーティもついに7回目だ!!
 今回は特別に、神からのプレゼントでイカしたリミックスをお届けするから楽しみにしてろよ!!」























































ヴィジュ2Remixの曲名は、
Cry Out (Superior Mix)なんですねー。
「Superior」ってどういう意味なんだろうって思って調べたら、
北米五大湖中最大の湖、スペリオル湖のことらしいですよ。(北米五大湖とかよくわからんけど)

でっかい湖のリミックスなのかぁ・・・

っていう解釈でいいんだろうか。



えーそんな気分な今日この頃、いかがお過ごしでしょうか?蓮根です。
スクロールお疲れ様でした・・・。
今回の小説はポプ7の時のお話です。
日記でも書いてますが、店長ヴィジュ2リミクス大好きなんです!!!!
原曲より好きなんです!!!(いや、原曲も好きですけど。)

そんな、曲への愛で作りました。(ユーリさんへの愛は!?)
終盤の、MZDが曲を演奏するシーンでは、
お手持ちのヴィジュ2Remixをかけながら読んでみて下さると嬉しいです!!

店長がポプに出会ったのは「9」の時期なんですが、
学校の近くにあったゲーセンには「7」しか置いてなかったので、出会いは「7」なんです。
好きな曲も、結構「7」のが多いんですよね〜。

ポップンパーティの仕組みとか、もう少し詳しく考えてみると面白いかも。
大人なMZDが書けて楽しかったですvv
ユーリさんとMZDのコンビって、いいですよね!!(グッ)

相変わらず支離滅裂・・・(汗)



最後まで読んで下さって、本当にありがとうございました!
ご意見ご感想、お待ちしておりますvv





前へ

2つ前へ