とにかく忙しかった。
チョコの仕分けが終わると、
アッシュは早速スポンジ作りに、スマイルとジャックは残りのチョコを地下の冷蔵室へ大移動。
やっと一段落ついたと思えば、事務所のほうへ届けられたチョコが片付けたばかりのリビングを襲う。
昼食も作業をしながらおにぎりを食べただけだし、甘いにおいでジャックが酔っ払ってしまったり。
絶えかねてユーリを呼びに言ったスマイルが、
半殺し(居眠りしていたのを起こして逆鱗にふれた)になって帰ってきたかと思えば
リエちゃんが女の子友達を引き連れて無断進入、おやつパーティになったりで、
ユーリ城のリビングは大騒ぎだった。
ようやく落ち着くことができたのは、夕食の後。
「つかれた・・・」
「・・・っスね・・・。」
「・・・・・・。」
アッシュとジャックはソファーにぐでっと身を預け、ぼんやりと宙をみつめている。
スマイルにいたっては、ソファーの背にもたれかかり、干された布団状態。
ユーリはまだ自室の机で寝ていると考えられる。
大人二人が「あ゛ー」「う゛〜」などとうめいているのを聞きながら、
ジャックはぼんやりとシャンデリアを見上げていた。
少しだけ、ほんの少しだけ、視界に霞がかかる。
「・・・スキって・・・なんだ・・・?」
独り言のような、少しかすれた小さな声。
二人がそれを聞き逃すはずがない。分かっていながらも言葉にした自分に、少し驚いた。
しっかりと、二つの視線が自分を捕らえているのを感じる。
「スキって・・・どういうことなんだ・・・?」
今度はしっかりと、言葉を紡ぐ。
先に返してきたのはスマイルだった。
「なァーんだ。そんなコトならアッスくんの歌を聴けばすぐわかるヨー!
Slow Downとか、The Zとか、Erosとか・・・ねぇ?」
「ねぇ?じゃねぇっスよ!なに言ってるんスかスマーー!!(怒)」
「エー?だってすごく分かりやすいじゃん?っていうか分かりやす過ぎだよネ・・・ヒヒヒ☆」
「あ、ああああいうのはジャックには早すぎるっスよ!!」
「まぁ確かに。つーか、前から思ってたんだケド、
アッスくんのCDってR指定表示つけなくてイイの?」
「そう言えばそうっスね・・・
じゃなくて!!そういう話は子供の前でする話じゃねーっス!!」
「ヒッヒッヒッ☆アッスくん楽しー!おもしろー!」
「アンタって人は・・・どうしてそうすぐにソッチのほうに話を持ってくんスか・・・(怒)
えーと、ジャック?」
ごん、と軽くスマイルの頭の上に拳を落とし、ジャックに向き直った。
この世界に来て間もないその少年は、少しうつむいて自分の手を見つめ、
困ったような、苦しいような表情を浮かべている。
「・・・大事な・・・キモチ、なんだろうな・・・それは・・・。」
少し首を振って、しぼりだすような声で。
「どうして・・・オレは・・・・・。」
「ジャ・・・」
ジャック、と名前を呼ぼうとして、アッシュは踏みとどまった。
さっきまで自分の後ろにいたスマイルが、いつのまにかジャックの近くまで来ていて、
彼の前にしゃがみこんだから。
「スキっていうのはね、ジャッくん。
自分じゃない誰かのことを考えることだよ。」
いつになく真剣な声に顔をあげると、紅い単眼に自分が映っているのが見えた。
「キミはちゃぁんと、‘スキ‘を知っているよ?
ただ、そのキモチに‘スキ‘っていう名前をつけてないだけ。
アッスくんが、キミがおいしいって言った料理を覚えててくれたり、
ユーリがキミのコト、名前で呼んでくれたり。
・・・ココが、あったかいでしょ?」
トントン、と自分の胸を指で軽く叩くスマイル。おずおずと、己のその部分に手を当てるジャック。
この世界に来て、この城に来て、ここに住んで、この三人と過ごして。
ときどき、スマイルに言われた場所が燃えるように熱くなる。
自分の扱う炎より、熱いと感じることさえ。
「・・・これ・・・が?」
「そう。なんとなく分かるでしょ?」
答えを求めるように、そばに立つアッシュを見上げる。
ジャックの言葉なき問いかけに、アッシュは優しく頷いた。
「‘スキ‘って一言で言っても本当にいろいろあるんスけど、
それはこれから覚えていけばいいことっス。
今は、ジャックが感じている気持ちを大切にすれば、それでいいっスよ。」
産まれたばかりの感情に戸惑う彼に、精一杯の言葉と、笑顔を。
ジャックはしばらく二人を交互に見ていたが、ふと、ぎゅうっと胸元の服をにぎりしめた。
・・・また、熱くなってる。
「・・・オレ、スマイルとアッシュのこと、‘スキ‘だ。」
言葉にしてみれば、目の前の二人はますます笑顔になって。
「俺も、ジャックのことスキっスよ。」
「ボクもボクもー!っていうか、ユーリは入ってないのん?」
「ユーリも、‘スキ‘だ。」
「・・・なんていうか・・・面と向かって言われると恥ずかしいっスねぇ・・・」
「歌詞であンだけスキスキ言ってるくせに・・・なに照れてんのサ。」
「んなっ!だってあれは歌じゃないっスか!!」
「そうだねぇ・・・歌ならあーんなことやこーんなことも平気だもんねェ・・・アッスくんは・・・」
「ムキーー!!なんスか!なんスかその目はーー!!もうカレー作ってやんないっス!!」
「エ゛ーーーー!!!そんなァーーーー!!」
「自業自得っス!!」
バタン。
「五月蝿いぞ・・・貴様ら・・・。」
お寝坊吸血鬼、覚醒。
「・・・なんで起こさなかったんだこの馬鹿者どもがーーーーーーーー!!!」
「ぎぇぇぇぇぇ!!起こしに行ったら攻撃してきたじゃんかよーーーー!!」
「明日までに新譜を書き上げなければならないことを、忘れたとは言わさんぞ・・・」
「って、居眠りしてるユーリが一番悪いじゃないっスか!!」(がぼーん)
「起こしに来ないお前たちが悪い!!!」
「だから行ったってば!!」
「うわぁ、もう10時まわってるじゃないっスか!!急がないと!!」
「ジャック!コーヒーを入れろ!夜食を作れ!!」
「・・・・・・(汗)」
「子供はもう寝る時間っスよ!!つーか、使うなっス!!」
「ボクちょっとトイレに・・・」
「逃げるなっスーーーーーーーー!!(怒)」
この世界に来て、この城に来て、ここに住んで、この三人と過ごして。
今日もまた、少年の心に、優しい優しい火がともる。
・・・うわはー!!
すみません!こんなんですみませんー!(平謝り)
どうしよう・・・。いいのかこんなんで・・・。
とりあえず今年のバレンタインは、あげる人いないし学校もないから友チョコもできないという状況で、
でもやっぱ特別な日だからなーというわけで、書いてみましたポプ小説。
文章力皆無。
ユーリさんの出番が少なくて反省してます・・・
ジャッくんがポップン世界に来て、ユーリ城に落ち着くまでの話も考えてはいるんですよ?
・・・ぼんやりと(ダメじゃん)
そのうち書きたいです。がんばります。
読んでくださった方、本当に本当にありがとうございました!!!
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