「・・・KKは・・・友達なんだ・・・。」







たとえ自分の頭を少し乱暴に撫でたその手が、夜、赤く染まっていても。
ビルの屋上に居た猫を抱いた腕で、冷たくて固い銃を抱えていても。

見て見ぬフリをしている自分を見透かして、いつも少し悲しそうに笑う彼。



「友達・・・なんだ・・・」



見て見ぬフリをしているのがいいことなのか悪いことなのか、分からない。
自分と同じ罪を背負っているから、傍に居ることで傷をごまかしているのかもしれない。

彼を救いたいのか
自分が救われたいのか
両方なのか
どちらでもないのか

薄くなる意識。
いつのまにか、Lが銃を持った手を下ろしている。
でもそれが現実なのか願望なのか分からない。
感情が自分の中をぐるぐる回っている。
なにも分からなくなってくる。

ただ、Lが引き金を引けばKKが死ぬ、という現実があって。
死、なんてイヤというほど見てきたはずなのに。
今まで感じたどんなことよりも恐ろしくなった。

なぜ?どうして?
なにも分からない。
なにも。



LがKKに銃を構えている。
LがKKに銃を構えている。

もう大丈夫銃は下ろしている。

LがKKに銃を構えていた。
引き金を引いたら?
だってKKは「撃て」って言ったんだ。
「撃て」って言ったんだ。
引き金を引いたら?

もう大丈夫銃は下を向いている

引き金を引いたら、
引き金を引いたら、
懐かしい音とにおいと倒れる肢体。

残弾を確かめてもう一度激鉄を起こして
Lが自分の方に歩いてくる
倒れたKKから真っ赤な血が流れて床に広がって
Lはいつものように目の前であの座り方でしゃがんで
KKにしたようにオレの額にも銃口をそっとあてがって
少しだけ首をかしげていつもの調子で訪ねる




















「あなたはどうしますか?」













































































あれから、ジャックはその場に崩れるように倒れて気を失った。
Lが銃を床に落とし、ジャックに駆け寄ったとき・・・KKは初めて我に帰った。
脈も呼吸も正常、パニックによる過呼吸が原因だろう。

ジャックをベッドへ寝かせ、世話をシエルに頼むと、KKはLを外へ連れ出した。






「・・・あの2人もお前と同じで、別の世界から来たんだよ。」


玄関の前の、コンクリートで打ちっぱなしになっている廊下。
ドアにもたれかかり、タバコに火をつけながら・・・KKは言った。


「ま、ロクな生い立ちじゃないことは確かだわな。」
「クローン・・・ですか。」
「・・・多分。」


やっぱ分かってるか。と思いながら、KKはふゥ、と煙を吐き出す。


「先ほどは、すみませんでした。」
「・・・なんで謝るんだよ。」
「謝るべきだと思いましたので。」


KKはLの方を見た。
Lは首だけベランダの方へ向けて、ビルの隙間から見える街を眺めている。


「・・・なんで撃たなかったんだよ。」


同じ景色を眺めながら、KKは言葉を紡いだ。


「たとえ犯罪者でも、人が人を殺すことを正しいとは思いません。
 ・・・あなたは法で裁かれるべきです。」


先ほどとは反対に、お互いの視線を交わすことなく話す。


「ほんじゃあ、試しに牢屋にブチ込んでみるか?」
「・・・おそらく、すぐにMZDが釈放させるでしょうね。」
「だろうな。」
「なぜなんですか?」
「そんなの俺が聞きてぇよ・・・。だからお前に頼んだんだよ、アイツが俺を殺さねーから。」


なぜ死にたいのか、などと訪ねるのは無粋だろうか。
なぜ殺したのか、と訪ねることに意味はあるのだろうか。

Lは沈黙し、KKもそれ以上は話さなかった。














「ジャック!こら!!寝てろってばオイ!!」


あせったような声と、ドタドタという足音が家の中から聞こえる。
KKが、もたれていたドアから身体を離すのと同時に、バンッ!と勢いよくドアが開かれた。


「KK・・・L・・・」


少し息を荒げながら、ジャックは2人の名を呼んだ。


「大丈夫ですか?」


かかとを踏んだスニーカーで、ぺたぺたとジャックに近づくL。
ジャックはLを見上げたが、すぐに足元に視線を落とす。


「・・・ごめん・・・2人とも・・・」


小さな声で謝るジャック。
KKは、コンクリートの床でタバコを踏み消した。


「こういうことになるのは・・・想像できたのに。」

「あなたが謝ることはありません。私が望んだことですから。
 それに・・・謝るのは私のほうです。イヤな思いをさせてしまいました。」


いつもと変わらない、抑揚が無くて感情が感じ取れない喋りかた。
しかし、それにはわずかに苦いものが交じっていて。
顔を上げると、Lは少しだけ微笑んでいた。
その笑顔は、少しだけKKに似ていた。


「全くだぜ。大体、丸腰の相手にいきなり銃突きつけるか?普通。」


ぽんぽんとジャックの頭を撫でながら、いかにも原因はLにあるとでも言いたげに言葉を紡ぐKK。
一瞬の間を置き、Lも口を開く。


「背後から近づいてくるあなたがいけないんですよ。警戒するのは当たり前です。」
「んなっ・・・お前が床にブチまけるから悪いんだろ!?どーすんだよ後片付け!!」
「あんな分かりやすい場所に隠しておくからです。もうちょっと頭を使って・・・」
「ムッキーー!分かりやすいだとっ!?あんなところ探すのお前ぐらいだっての!!オタク面がよく言うぜ!」
「・・・最後のは聞き捨てなりませんね。」


「あ・・・の、おい、ちょっと・・・」


後ろからやりとりを聞いていたシエルが、おろおろと割って入ろうとするが、
2人の間には、すでに強烈な火花が散っている。


「やっぱ、お前に殺されなくてよかったぜ。なんかムカつく・・・」
「ためらわずに撃つべきでしたね。」
「なんだと!?さっき人が人を殺すのは正しくないとか言ってたのはどこのどいつだっ!!」
「人として扱わなければ何の問題もありません。」
「・・・お前な・・・。」
「なにか?」






(恐い!普通に恐い!!)


にらみあう2人の間で、シエルはジャックを盾にプルプル震えている。
ジャックはバチバチと火花を散らす2人を見上げ、どこか安心していた。
2人とも、やりとりを楽しんでるだけだ、と。


「お前とは近いうちに決着(ケリ)つけなきゃいけねぇみてーだな・・・。」
「返り討ちにして差し上げます。」
「ハッ!度胸だけは褒めてやるぜ!・・・で、今日はこれからなんか予定あるのか?」
「いいえ、特には。」
「上等!」


KKはニヤリと笑って見せた。
ドアをふさぐように立っている子供2人に、中に入るよう手で示す。


「ほら、はやく入って片付け手伝え。L、お前もな。」
「なぜ私が。」
「お前が散らかしたんだろうが!!」
「KK~!これどこー?」
「わ!バカ!!引き金に指かけるんじゃねー!!」


シエルのきょとんとした声に、あわてて部屋の中に入るKK。
Lも、とりあえずそのあとを追う。


「ほらサッサと片付けろ!片付けねーとメシ抜きだぞ。」
「え!メシ食わせてくれるのか!?」
「・・・そうなのか?」


床に散らばった弾丸を広い集めながら、ジャックとシエルは期待のまなざしでKKを見る。


「おう。俺のとっておきのラーメン屋に連れて行ってやる。」


ニヤリ、と笑って見せたKKに、シエルはよっしゃあ!とガッツポーズを取り、
ジャックは弾を拾うスピードを上げた。


「そこのラーメン屋には、激辛大盛りラーメンってのがあってよ・・・」


言いながらKKはLの方に顔を向けた。
ぱちくり、まばたきをするL。


「その大盛りラーメン、20分で完食できたらタダなんだなーこれが。」

「・・・まずはそれで勝負というわけですか。」
「おうよ。ま、受けるか受けないかはお前の自由だがな。」
「受けて立ちましょう。」
「ははっ!そうこなくっちゃな!!」















子供2人が床を這いずり回っているのを背景に、KKとLは闘志の炎を燃やす。
さて、決着やいかに。


今日も、ポップンワールドは平和だ。




































































Lと愉快な仲間たち(笑)

なんだかうやむやのまま終わってしまいましたが・・・
多分LとKKは仲が悪いです。
お互い幼稚で負けず嫌い(笑)
でも、両方ともジャックとシエルが好きなので、
悲しませたくないからとりあえず様子を見よう、みたいなイメージです。

Lは・・・犯罪者は法律のもとで裁かれるべき、という考えが基本だと思います。
でも、それはあくまで基本なので、
自分の中で正しいと思えば、法律に反していてもそっちを取ると思います。
興味を持った事件しか動かない、と言うところから考えても、
そういう思考を持っている可能性は高いでしょう。
犯罪者を追い詰めても、必要がないと思えば警察に報告は控えたりするのでは・・・
「私は警察ではありませんから。」とか言って・・・
まーあんまりそういうことはないだろうけど(笑)
ライトとは違った形で、KKやジャック、シエルと関わっていって欲しいですね。
なんとか光を与えてくれないかな・・・



今回なんだかシリアスっていうか暗くて申し訳ありませんでした;;

あとがき長いついでにもう1つ話をすると、
人間には「死への欲求」というのがあるそうです。タナトスというものです。
「死にたい」って思うのは、精神的な欲求としてはごく自然なものらしいのです。
私も「今死んだらどうなるだろう」っていうのはしょっちゅう考えているので、
「それは自然なコトなんだよ」というこの話を聞いた時に、なんだかすごくホッとしたのを覚えています。

あまり過激なのはアレですけど、
ある程度本気で「今死んだらどうなるだろう」と考えるのは、結構大事なことではないかと。
本気で考えるっていうのは、家族や友達の反応、新聞や世論、葬式に集まってくる親族、
そして、棺に入れられた自分、燃やされる自分、白い石の様な骨になった自分、墓に放り込まれるその骨。
徹底的に考えなきゃダメだと思います。
いろいろ想像してるうちに、ふと、「あ、自分は今生きてるんだ。」というのが浮かんできます。
今、死のうと思えば死ねるけど、生きようと思えば生きれる。みたいな。
死や死ぬことを考えるのは、生きていることを再確認するために大事なことではないかと。
死にたいって考えてる人がもしここを見ていたら、
「いやいやそんなこと考えちゃダメだわ」って思うのも大事ですけど、
思いっきり死ぬことを考えてみるのも、また一興かと。
生きてることが新鮮になると思いますよ。





長々と申し訳ありませんでした(汗)
お付き合いいただき真にありがとうございますvv





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