城に帰ると、LはMZDに話したことと同じことをDeuilの面々に語った。



「はあ・・・Lさんの世界は物騒っスねぇ・・・」
「そりゃ寝不足になるのも仕方ないネ。」

「・・・ユーリさん。」


アッシュとスマイルの言葉を聞きながら、Lは腕を組んで少しうつむいていたユーリに声をかける。
ユーリが顔を上げ、視線が絡む。


「MZDが、この城にある書庫に、何か手がかりになる物があるかもしれないと。」
「・・・・・・・・・。」
「見せていただけませんか。」


ユーリはしばらく考えていたが、立ち上がり、ついて来るように目で示した。


























6人は古い大きな扉の前に立っていた。
石でできたそれは、2匹の獅子の模様が彫られ、うっすらとほこりを被っている。


「ここに来るのも久しぶりだな・・・」

「これ、図書館だったんスか!」
「でっかい扉だな・・・。」
「図書館と言うほどの物ではない。ただの倉庫だ。」


驚きを隠せないアッシュと、大きな扉をポカーンと見上げるシエル。
そっけなく答えながら、ユーリは扉に手をかざした。

2枚扉の裂け目が鈍い光を放ち、ズズズ・・・と地響きを立てながらゆっくり開いていく。
そこには、見上げるような本棚が何十列、いや、何百列も並んでいた。


「・・・・・・・・・。」


しばし、その光景に言葉が出なかった。


「あらためて見ると、なかなかスゴイ場所だねェ・・・。」
「スマイルはここに来たことがあるんスか?」
「200年前に・・・ネ。なにも見せてもらえなかったケド。」
「・・・見せてもらえなかった?」


「200年前」という単語に、アッシュは目を細めた。
ちょうどユーリが永い眠りについたころだ。スマイルはここで、何を調べたというのだろう。
アッシュの思考は、ユーリの声によって中断された。




「ここの書架は意思を持っている。」




言葉を紡ぎ、振り返ってLの方を向く。


「お前が真にその知識や情報を求めていなければ・・・また、書架がお前を認めなければ、触れることもできない。」


その場の視線がLに集中する。
Lは静かに部屋の奥に歩を進めた。


「どうすれば、本に認めてもらえるのですか。」
「心の中で、自分が知りたいことを書架に語りかけることだ。
 認められれば向こうから飛んでくる。」


その言葉が終わるか終わらないうちに、
ユーリの横の本棚から、ふわり・・・と本が浮き上がった。
向こう側を向いていたLが振り返り、手元に舞い降りた本を受け取る。


「ほ・・・本当に本が飛んだ!!」
「・・・ありがとうございます。」


シエルの声を聞きながら、Lは小さくつぶやいた。
表紙には見たこともない文字が並んでいる。
どうしたものか・・・と思いながら見つめていると、グニャリと字体が歪み、漢字とひらがなに変わる。


「・・・・・・!」
「意思を持っていると言っただろう。」


驚くLに、ユーリは声をかけた。
表紙をめくり、ざっとページに目を通す。


「まあ、一冊か二冊ぐらいなら読めそうだな。」


言葉の裏に、所詮はその程度・・・という感を込めながら言う。
部屋から出ようと、回れ右をして入り口へ向かうユーリ。
ぼんやりと口を半開きにしているアッシュが、おずおずと後ろを指し示す。


「・・・・・・?」


ゆっくりと振り返った視線の先にある光景に、ユーリの目が見開かれる。


「・・・すごい・・・」


ぼそり、とつぶやくジャック。

本棚と本棚の十字路に立たずむLを中心に、何十、何百冊の本がゆっくりと渦を巻いていた。
先ほどの本に目を落としたまま、静かにそこに在る1人の人間。
後ろの窓から漏れる午後の柔らかな光が、まるで後光のようにLを照らす。

どこかの映画のワンシーンのようだった。









「・・・お前は・・・一体・・・」









ユーリの声に顔を上げ、周りを飛ぶ本の数に少し驚いたような顔をするL。


「・・・ありがとうございます。」


軽く頭を下げ、Lは言った。






































「・・・ありえない。」


図書館にLと子供2人、アッシュを残しておいて、ユーリとスマイルはリビングに戻ってきた。
ソファーに腰を沈め、口元に手をあててユーリが言う。


「ボーっとしてるように見えるけど、あの人すごく頭キレるね。」
「初めてあの書庫に入って、しかもただの人間にあんなにも・・・」
「それだけ、キラってやつを捕まえたいんじゃナイ?」
「・・・自分が死ぬかもしれないのというのに、あの意思の強さはなんだというのだ。」


手の平にアゴをのせ、ため息をつく。
珍しく度肝を抜かれてしまったらしいユーリに、思わず笑みが浮かんでくる。
ジュースのコップでそれを隠しながら、スマイルは言葉を紡いだ。








「‘人間だから’・・・かもしれないねェ。」









ユーリはしばらく黙っていたが、もう1つため息をつき、腕を組んで座りなおす。


「・・・そういうことにしておいてやるか。」

































「あーもう!!ここも200年間ほったらかしだったんスね!!」


三角巾とエプロンを装着し、ほこりだらけの本棚にハタキをかけるアッシュ。
ジャックは落ちたほこりをホウキではき、シエルは本棚の側面を雑巾がけしている。
Lはと言えば、本を床におき、自分も床にうずくまって読書に没頭している。


「まったく・・・こんなホコリだらけの所にいたら、ノド痛くなっちゃうっスよ!!」


プンスカ頭から煙を吹きながら、テキパキと掃除していくアッシュに、ジャックとシエルはため息をついた。
この状態になったら、ある程度キレイになるまでここから出してもらえないだろう。
とりあえず手を動かすしかない。


「・・・ジャック、シエル。」


ふいに名前を呼ばれ、2人はLの方を向いた。
少し向こうの方で2、3冊の本に囲まれているLは、目はページに落としたまま、言葉を紡ぐ。


「この世界のことがもっと知りたくなりました。
 明日、どこかに連れて行ってくれませんか?」


言い終わってから顔を上げてみると、遠くにいたシエルがいつの間にか目の前にいる。


「どこに行きたいんだ!?どこにでも連れてってやるよ!!」


満面の笑顔を浮かべるシエルの肩越しに、びっくりしているジャックの顔が見える。
すぐあとに、自分とシエルの上にスッと影がかかった。
シエルの頭の上に視線を向けると、ハタキを構えたアッシュの姿が。


「シエル・・・サボりはダメっスよ・・・?」
「わわ!!さ、サボってねーよ!!」
「Lさんも!!そんな姿勢で本読んでたら目が悪くなるっス!骨格も曲がるっス!!」


手でシエルに仕事に戻るよう示し、ひょいっと、Lの首根っこを掴んで持ち上げるアッシュ。
しっかり本は持ったまま、特に抵抗しないLを、先ほど見つけた机と椅子がある場所へつれていく。


「・・・なぁ、あれって‘ねこづかみ’だったよな・・・。」
「そうだな・・・」


ストン、と椅子の上に下ろされ、なおも1つ2つ注意を受けているLを見ながら、ジャックとシエルは確認しあう。


「アッシュが馬鹿力なんだか、Lが軽いんだか・・・」
「・・・どっちもじゃないのか?」
「うん。多分そうだ。」

「こらっ!2人とも!手が止まってるっスよっ!!」



















今日も平和なユーリ城だった。

































































そんなわけで、第2弾でございます。

デスノートとリンクしつつ、ユーリさんの過去とかも匂わせてみたり・・・
た・・・楽しいなァ!!(笑)
こう、Lの内面に迫っていけたらいいなあと思いますね。
原作のLは、いつも自分と他人の間に線を引いてますから・・・
その線がなくなるような相手が現れたら、どういう話をしてくれるのでしょう。
妄想は止まりません。(え)

Lは、なんだか「ロード・オブ・ザ・リング」のガンダルフみたいなイメージがあります。
「賢者」ってカンジ。
あと、スマイル以上に好き嫌い激しいの希望。
アッシュは食堂のおばちゃんですから、お残しは許しません。

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