:REISON D’ETORE (レーゾン・デートル)
・存在理由
・存在価値
レゾン・デートルとも。
PURSUER−追う者ー X
「原子・・・爆弾・・・」
ジャックの話に、アッシュは息を呑んだ。
「あ、そっか!だから負けアクションで爆発しちゃうんだネ!!」
「そこじゃないっスよ!!!」
ポン、と手をたたくスマイルに、即ツッコミが入る。
そういう反応が返ってくるとは思わなかったので、ジャックはおろおろと2人を交互に見た。
「いやーコレで謎が解けたヨー!ヒッヒッヒ☆」
「アンタって人は・・・;;」
ぱちぱちと手を叩き、ご機嫌なスマイルの横で、ガックリうなだれるアッシュ。
「まぁそれはオイトイテ、ジャッくんはこれからどうするのン?」
「・・・・・・。」
「っていうか、俺たちはどうすりゃいいんスか!?」
「んー。
とりあえず、72時間後に来るっていう軍隊のことは考えなくてイイよ。」
「まぁ、俺もそう思うっスけど・・・」
「・・・どういうことだ?」
2人の言葉に、ジャックは不思議そうに言った。
「え、だって、そんなコトMZDが許さないだろうし。」
「あの人のことっスから、今ごろ神パワーでなんとかしちゃってるっスよ。」
「だから、ジャッくんはシエルくんのコトだけ考えればイイと思うヨ。」
あっけらかんと言う2人に、ジャックなMZDの顔を思い浮かべた。
・・・確かに、言われてみればそれもそうかもしれない。
しかし、全ての問題が解決したわけではなかった。
「・・・シエル?Xのことか?」
「ん?あ、うん。73145って、ひっくり返すと「シエル」って読めるからネ。」
「その子も、ここで預かれないっスかねぇ・・・」
「どうだろうねェ・・・。向こうはジャッくんを殺す気マンマンなんでしょ?」
「・・・おそらくは。」
ジャックは目を伏せた。
ソファーの背にどっかりと体を預け、スマイルはあごに手を当てる。
そんな2人の様子を、アッシュは不安そうに見守った。
「・・・殺したくない。」
少しの間のあと、ぼそりとつぶやくジャック。
「アイツも・・・オレと同じだから。」
銃声と悲鳴が子守唄のような、あの世界。
命は量産型で、体はただの入れ物であり道具。
心は金で、どうにでもなった。
愚かで弱い人間は・・・全てを手に入れようともがいているうちに、全てを失った。
そんな中で、アイツもオレも「生産」されて。
なにも与えられず。
ただ、命を奪う毎日。
生きる価値は?
存在する理由は?
オレとアイツの違いは?
「・・・オレはジャックだ。Z−73111じゃない。」
顔を上げ、キッ!と2人を見て、そのまま立ち上がる。
「ジャック・・・」
アッシュの心配そうな顔に、どこか安心している自分が居るのを感じ、ジャックは拳を握り締めた。
守りたい。奪われたくない。
黒い少年の笑みが、頭によぎる。
・・・奪われてたまるか。
頭の中のイメージをにらみつけ、口元を引き締める。
「ジャッくんの好きにすればいいよ。」
ソファーから立ち上がりスマイルが言う。
静かで落ち着いた声に、ジャックは頷いた。
「・・・準備は?」
闇に向かい、MZDがつぶやく。
すぐ横に浮かんでいるヤモリは、声を出さずにうなずいた。
「あとはタイミングだけだな。」
「・・・・・・。」
「あん?なんか文句でもあるのか?」
ムスッとしたままのヤモリに、MZDはきょとんとして話しかけた。
「・・・本当にやるのか。」
低い声で言葉をつむぐヤモリに、
MZDは一瞬間をおき、いつもの笑いを浮かべた。
「だって俺、神だし?」
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