「・・・・・・・・・・・・・。」


夜の闇の中、深い森をぬけていく。











『お前らに、この世界は落とせないぜ。』











頭によぎる、男の顔と言葉。
走りながら、黒い少年は眉をひそめた


(負け惜しみだ。何の根拠もない。)


発光弾をまともに食らい、まだ眼の奥がズキズキと痛む。


(もうこの世界は終わってる。Zがここへ流れ着いた時点で、運命は決まっていた。)


自分たちの組織相手に、何ができるというのだ。
銃もない。爆弾もない。毒ガスも、ウイルスの開発すら行っていないこの世界に。
ヘラヘラと、ウソのように穏やかな毎日を、笑って過ごしているここの人間に。

なにかできるはずがない。

この星は、この世界は、組織の糧となり・・・滅びる運命にあるのだ。
分かりきっている結果。

なのに。











『お前らの世界にないものが・・・ここにはある。』












あの笑みが、あの瞳が。
意識を捕らえて離さない。


「クソッ!!!」


手近にあった木の幹を殴りつけ、黒い少年は毒づいた。
うつむいて大きく息をする。
顔から吹き出た汗が、流れ落ち、地面に生えている草に当たって小さな音を立てた。

顔を上げると、こずえの先に大きな石の建物が見える。
・・・城だ。




「・・・運命に・・・逆らえるはずがないだろうが・・・!」























































城の前庭を、夜風が吹き抜けていく。



















「・・・・・・。」


ジャックは、久しぶりに装着したガスマスクのガラス越しに森を眺め、
急速に近づいてくる気配をうかがう。






「だ、大丈夫なんスか!?ジャック一人で・・・」
「とりあえず、やりたいようにやらせてあげようヨ。」


城の壁にもたれ、のんびりかまえているスマイルに、
アッシュはおたおたと話しかけた。


「そんな悠長な・・・!もし、死ぬような怪我でもしたら・・・」
「まあ無傷では済まないだろうケド、子供だもん。大丈夫だって。」
「子供だから余計危ないじゃ・・・」


そう言いかけて、アッシュは森の方にただならぬ気配を感じ、振り返った。
スマイルは笑みを浮かべ、ジーンズのポケットに手を突っ込む。








ガサガサ・・・と木の枝が揺れる。
草を踏む、布が巻かれただけの足。
ガスマスクを通して行われる呼吸の音が、静かな森でやけに響いて。

月光の下、黒い少年は姿をあらわした。















「気持ちイイ殺気・・・。」


スマイルは眼を細め、うっとりとため息をついた。
鼻を刺すにおいに、アッシュはわずかに顔をしかめる。


「・・・血のにおいがするっス・・・」











充分な間合いを取り、少年は歩みを止めた。
ガラス越しに、絡み合う視線。


「俺の手伝いをする気は、ないようだな。」


ガスマスクの下からもれる、くぐもった声。


「当たり前だ。」


黒い少年の言葉に、ジャックは短く答えた。
気配で、少年が眉をひそめたのがわかる。


「ならば・・・ここで死ね。」


少年の言葉が終わらないうちに、ジャックは、自分のガスマスクを顔から引き剥がした。

・・・白銀の髪が、夜の闇に映える。

同時にフェイスガードも外し、思い切り横へ放り投げた。
庭の奥のほうで、ガシャリと音を立てて落ちる武器。
焔のような赤い瞳が、夜の空間を挟み・・・静かに少年を見据える。

突然のジャックの行動に、少年は戸惑いを隠せなかった。






「・・・組織の軍は、来ない。」





キッパリと告げるジャック。


「・・・なっ・・・?どういうことだ!なぜそんなことがわかる!?」
「MZDがいるからだ。」
「MZD・・・?」
「この世界の神だ。」


ジャックの言葉に、少年は一瞬の間を置き、笑い出した。


「はははははっ!!神だと!?寝言は寝てから言うんだな!!」
「・・・・・・。」
「それに・・・なぜ武器を捨てた?
 楽に死にたいとでも言うつもりか?」














「・・・もう、やめろ。」














ニヤニヤと笑いながら話していた少年だったが、ジャックの一言で顔から笑みが消える。


「組織は来ない。お前がここで戦う理由は、消滅したんだ。」
「・・・・・・。」
「オレたちが戦う必要は、ない。」
「ふざけるな」


ジャックの言葉を打ち消すように、黒い少年は低い声で言い放つ。


「お前は俺が殺す。俺もじきに死ぬ。この世界は組織の糧となり、滅ぶ。それが運命だ。」
「・・・・・・。」
「戦う気がないなら話は早い。そこにそのまま立っていろ。
 ・・・燃やしてやる。」



少年は地を蹴った。
あっという間に間合いを詰め、たたずんでいるジャックに炎を浴びせようと、大きく息を吸い込む。


刹那。


目の前を白い物が横切ったかと思うと、
ボンベとマスクをつなぐチューブから、シューッ!と音を立て、ガスがぬけていく。


「なっ・・・!」


2本のチューブは切断されていた。
少年は突進するのをやめ、ジャックの横方向へ飛び上がり、着地する。
ジャックが動いた気配はない。






「道具使用禁止ー☆」







あっけらかんとした口調に、少年はバッと声のした方向に顔を向けた。
城の壁にもたれ、左手で包帯を弄ぶ青い髪の男。


「コドモの喧嘩は、素手でしなサイ。」
「スマ・・・その包帯ってホントなんなんスか・・・」


どうやら、チューブはあの包帯に切られたらしい。
得意げなスマイルに対し、アッシュは涙ちょちょ切れ状態である。


「・・・どいつもこいつもふざけやがって・・・!!なにが子供の喧嘩だ!!」


黒い少年は、スマイルに向かって走り出した。


「あらら。怒らせちゃった。」
「あわわわわ!!こっち来るっスよ!!」


わたわたとうろたえるアッシュを尻目に、スマイルはもたれていた城の石壁から体を離す。
黒い手袋を締め直し、至極楽しそうに目を細め・・・上唇をぺろりと舐めた。














「・・・ボクが相手しちゃってもイイのかなァ?」














ドクン。


本当に聞こえるかと思うほど、心臓が音を立てて跳ね上がる。
紅い単眼から発せられる強烈な殺気に、少年は背筋が凍るのを感じた。
危険、という2文字が頭によぎる。
普段なら、こういうヤツに戦いを挑むことはしない。

だが。


(・・・ふざけるな!)


カッ!と目を見開き、更にスピードを上げて、スマイルとの間を詰める。













「イイねぇ・・・。そういう身の程知らずな子、ボク大好きだヨ♪」













少し腰を沈め、攻撃を受ける体勢を取るスマイル。
アッシュも腹を決めたらしく、左手を腰に、右手を体の前に出して戦闘体勢になった。

少年は跳躍し、拳を振りかぶった。





































「・・・っ・・・!」





攻撃がスマイルに届くことはなかった。


素早く2人の間に入ったジャックが、振り下ろされた少年の拳を受け止め、
ガラ空きの腹部に強烈な蹴りを入れたのだ。
少年の体は弾き飛ばされ、柔らかな芝生の上に転がる。


「・・・てめぇ・・・!」


腹を抱え、黒い少年が毒づく。
夜の闇にそびえる巨大な城と、その上に浮かぶ月を背負い・・・ジャックは少年を見つめた。



















































「お前の相手は、オレだ。」
















































































































スマイル怖っっ!!!

(笑)えー・・・。

どうも、皆さまこんにちは〜vv蓮根です。
とうとう突入して参りました〜1Pジャックvs2Pジャック!!
サイドに怖い人がいますが、まぁ気にしないで下さい・・・
っていうかスマイルファンの方ごめんなさい!!
メッチャ楽しかったです!!(オイ)
怪しい、カッコイイ、ちょっと変態なスマが書けて大満足ですvv
武器は包帯。これ基本。
接近戦でも長距離戦でも全然OK!!サイコー!!!



ウチのDeuilは全員戦闘できます。
RPG風に言うと、

ジャック→勇者
アッシュ→戦士
  ユーリ→白魔導師
 スマ→黒魔導師

みたいな感じでしょうかね?
ユーリさんも黒魔導師っぽいですが、彼は微妙に回復系が使えると思うので・・・
あ・・・でも、
魔導師っていうか、魔族じゃん(笑)

ユーリさんと○ードオブナイトメアさまが茶飲み友達だといいな・・・。(妄想)



ではまた次回。
読んでくださった方、本当にありがとうございました!!
感想などございましたら、BBSにて伝えてくださると嬉しいです・・・v








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