生きることが罪と言うなら
愛することが罪と言うなら
ああ ここにいる僕と君は
世界一シアワセな犯罪者
「・・・・・・おかえり、ジャッくん。」
玄関を抜け、リビングに入ると、ソファーに横になったまま・・・スマイルが言った。
「・・・・・・。」
「アッスくん、ジャッくんが帰ってきたヨ。」
なんと言ったらいいかわからず、黙っているジャック。
スマイルの声に、奥のキッチンにいたアッシュが、弾かれたように出てきた。
「ジャック・・・!」
うつむいたままのジャックのそばに歩み寄る。
大きな手が自分の肩を優しく包むのを感じ、ジャックは顔を上げた。
「無事でよかったっス!・・・怪我はないっスか?」
深緑の髪の間からのぞく、深紅の瞳。
心底ホッとしたようなその顔を、直視できなくて・・・ジャックは目をそらし、頷いた。
「さァて、ぜーんぶ話してくれる?」
いつもと同じ調子の、スマイルの声。
ギュウっと拳を握り、顔を上げる。
迷っている時間はないのだ。
ガシャッ・・・カラカラカラ・・・
地面に落ちた銃。
KKが手を伸ばして拾う前に、黒い少年はそれを更に遠くに蹴飛ばした。
「チッ・・・!!」
腹を殴られ、倒れたあと・・・KKは少年の肩めがけ、引き金を引いた。
少年は特に避けようとはせず、ダラダラと流れる血をそのままに、KKに襲いかかってきた。
典型的な肉弾戦。
空手とか拳法とか、闘いの型はいろいろあるが、それはどれにも当てはまらなかった。
スピードと威力。
あとは攻撃する場所さえ決めれば・・・どうでもいいみたいだった。
自分の腰ほどまでしかないのに、信じられないほどの重い攻撃。
こちらからの攻撃は、無駄な抵抗、という言葉がピッタリあてはまる程度のものでしかなかった。
「ぐっ・・・」
KKがもう一度、コンクリートの路地に倒れる頃には、少年の肩の傷はすっかり消えてしまっているようだった。
「・・・バケモノめ・・・」
「そのバケモノに関わったのは、お前の意思だろ?」
わざと、急所を外した攻撃だった。
なぶり殺しにする気かとも思ったが、どうやらそういうものでもないらしい。
自分を動けないようにして、何をするつもりなんだろう。
「・・・殺さないのか・・・?」
「別に。どうせ60時間後にはみんな死ぬ。」
「それは・・・どうかな・・・。」
ニヤリ、と笑ってやれば、少年は怪訝そうな表情を浮かべて。
「なにが可笑しい?」
「お前らに、この世界は落とせないぜ・・・。」
「・・・なにを根拠に。」
「お前らの世界にないものが・・・ここにはある。」
夜の風が、路地を吹き抜ける。
ネオンの光が、少年の横顔とKKの背中を照らしていた。
「・・・なぜ、Zをかばう?」
ややあって口を開いた少年に、KKは目だけ動かして、その姿を捕らえる。
「俺を殺すつもりで攻撃してこなかったってことは、俺たちがどういうモノなのか・・・知ってるんだろ。」
「・・・ああ・・・残念ながら、な。」
「危険だって感じなかったのか?」
「やっべぇぐらい感じた・・・。」
「・・・なら、なぜ。」
ごろりと寝返りをうち、黒い少年と目をあわせる。
暗闇の中で・・・KKはなぜか、その少年にが泣きそうな顔をしているようにみえた。
自分の顔が、勝手に緩んでいるのがわかる。
KKが微笑んでいるのに気づいて、少年はまた困惑しているようだった。
「・・・俺にもわかんねぇな・・・。」
「・・・・・・。」
「ただ・・・そうしたかっただけだ。」
「やっぱ、殺す。」
黒い少年は拳を振りかぶった。
KKは、少年の瞳に宿った虚ろな炎に目を細め・・・つぶやく。
「悪いが・・・それはできない相談だな。」
言い終わると同時に、KKから鋭い光が発せられた。
「なっ!?」
暗闇に慣れた目を、強い光が容赦なく射抜く。
脳に突き刺さるようなすさまじい痛みと、バランス感覚の喪失。
少年は崩れるように、その場にヒザをついた。
「・・・ジャックは、ここから真っ直ぐ北へ行ったところにある、森の中の城にいるぜ。」
空になった発光弾のケースを放り投げ、KKは立ち上がった。
「てめぇ・・・っ!!」
両目を手でゴシゴシと擦りながら、黒い少年が低くつぶやく。
あれだけダメージを与えておいたにもかかわらず、男の気配がみるみるうちに遠ざかるのを感じる。
「全て無くなるんだ!!!お前もZも!!全て失えばいい!!!」
離れていく気配に叫んだ。
「奪ってやる!!お前たちが俺が持っていないものを持っているなら、それを全部奪ってやる!!!」
背中で、黒い少年の慟哭(どうこく)のような怒鳴り声を聞きながら・・・KKは歩いた。
なんとか体を動かせるだけの体力はあるが、
的確で容赦のない攻撃は、効いてないといったらウソになる。
足を前に出すことだけを考えていた。
否・・・もう一つ心によぎったのは、あの黒い少年への同情と哀れみ。
(・・・MZD・・・)
できればアイツも救ってやってくれと、この星の神に心の中でつぶやく。
自分は神に何かを祈ることができるような人間じゃないということは、痛いほどわかっている。
すがる気もない。
・・・だが。
(あの2人は・・・なんも悪くねぇんだよ・・・!)
それはきっと、自分が一番よく分かってると思うから。
だから。
どうか。
どれぐらい距離を開けたのかわからない。
何本目かの路地を曲がったところで、自分の意識が急速に薄くなっていくのを感じた。
完全に気が失せる寸前、なにかもやもやしたものに支えられた・・・気がした。
っ楽しかったァァァァ!!!!!
自己満足。(笑)
あああ・・・楽しかった・・・面白かった・・
すんごいドキドキわくわくしながら制作したのが伝わると嬉しいですvv
次が大変だ(笑)
えー・・・今回微妙暴力?シーンやら流血?やら書きましたが、大丈夫でしたでしょうか?
いや・・・生ぬるさが。(え)
もっと、こう・・・背筋がゾクゾクするような戦闘シーンが書きたいですねー・・・(高望みするなよ)
読んでくださった方、本当にありがとうございました!!
ブラウザを閉じて戻って下さい。
前へ
慟哭(どうこく)・・・大声をあげて嘆き、泣くこと。またはその声。