「珍しいな、お前から来るなんて。」






メルヘン王国の一角、ユーリ城に負けず劣らずの巨大な建物の中。
宙にフワフワと浮いたまま、書類に目を走らせるMZDは、少し不思議そうに言った。

柔らかな絨毯の上に立ち、この世界の神を見上げているのは、
全く同じ姿形をしたもう一人の神。



「侵入者だ。」



全身を黒い服で包んだ少年は、両手をポケットにつっこんだままぶっきらぼうに言い放つ。


「知ってるよ」


大きなあくびをしながら、のんびりと返事を返すと、
もう一人の自分が、鋭い目をさらに細め、にらみつけてくる。


「・・・だから、あの時オレは止めておけと言ったんだ。」

「言ったっけ?」
「言った!!何回もだ!!てめぇ物忘れ激しすぎるんだよ!!」
「あーあーわかったわかった!悪かったって!」
「全然悪いと思ってねーだろうが!!」
「あー・・・それも悪かった。」


自分と同じ位置まで浮かび、怒鳴る相方の口から飛ぶツバを書類でガードしながら、
MZDは適当に謝った。








「ったく・・・どうするつもりなんだよ。」
「別にどうもしないかな。」

「ムッキーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」


なんでもないように言うMZDに、
黒い少年・・・ヤモリは、備え付けのちゃぶ台(ツッコミ専用)を思いきりひっくり返す。
なだめる影を押しのけ、ヤモリはMZDにビシッと人差し指を向けた。


「ちょっとは焦ろよッ!!このパラッパラッパー神がッ!!!」
「・・・それ悪口なのか?」
「これはメルヘン王国の・・・いや、この世界の危機だぞ!!わかってんのかてめぇ!!」
「まぁ確かに危機かもしれねーけどな。」
「だったらなんでそんなに余裕なんだよ!!」


                 
今にも頭が噴火を起こしそうな勢いで怒るヤモリ。
                 
MZDは中指でサングラスを押し上げ、不敵な笑いを浮かべた。




                 
「そりゃお前・・・俺が‘神’だか」




言い終わらないうちに、さっきのちゃぶ台を顔面に食らい、神は落ちた。














































「これが・・・サクラ・・・」








視野の大半をしめる淡い色彩に、ジャックはぼんやりとその場に立ち尽くしていた。


「こうやってお花見に来るのも久しぶりっスねぇ・・・」
「そうだな。」


短く答えるユーリの顔も、いつもより穏やかに見える。
あまり知られていないスポットだとはいえ、一般客もたくさん居る水辺の公園。
帽子をかぶったり眼鏡をかけたり、髪を下ろしたり。
3人はDeuiだとバレないよう、服装もがらりと雰囲気を変えていた。


「みーんーなー!!あっちに出店があるヨー!!!」


変装しても元が元なので振り返る人も多いが、
全力ではしゃいでいるスマを見て、まず気づく人はいないだろう。


「・・・デミセってなんだ?」
「行ってみればわかるっスよ。」






コレがわたあめ、コレが金平糖、あっちがリンゴ飴で、ソレはたこ焼き!!」


一つ一つ名前を挙げるスマイルの声につられ、キョロキョロとせわしなく首を振る。
色とりどりの店と品物に、美味しそうなにおい。


「これがデミセなのか・・・?」
「そうっス。なにが欲しいっスか?」
「・・・買ってくれるのか?」
「もちろん。今日は、好きなものなんでも買ってあげるっス!」

「ボクも買ってあげるー!っていうかボクも買ってもらうー!!」
「はぁ!?自分の分は自分で買うっスよ!!」
「いいじゃんー。ケチケチしなくたってさー。」
「ケチじゃねぇっス!!」
「お金あるんでしょー?ケチケチー!」
「あってもアンタにおごる分はねぇっス!!」
「うあ!ヒドーーーイ!!!!!」



「〜〜〜五月蝿い!場所をわきまえろバカどもが!!」



「「・・・ごめんナサイ」」


ユーリに怒鳴られると同時に、かなりきつい手刀をくらい、
アッシュとスマイルは大人しくなった。

「俺はわるくないっス・・・」

「ケチなアッスくんがわるいんでショ!?」「なにか言ったか?」「「ヒィィィィ!!!」」





ホットドックにクレープ、どて煮に串カツ。

ボールすくいや水風船、射的、宝つり、輪投げ・・・


ジャックが興味を持ったものは、残りの三人も付き合い、
いつのまにか、ユーリをのぞく三人の手はオモチャやお菓子でいっぱいになっていた。

日がかたむいて、空気にも薄らと酒の香りが混じりはじめる。


「今日は、ひとまず帰りましょうか・・・。」
「そういえば、お酒飲めなかったネー。」
「そうだな・・・」
「スタジオの近くにも桜の木があったっスよ。今度、スタッフさんたちも誘って宴会するとか・・・あれ?」


財布の中身を確認していたアッシュが、はた、と立ち止まり、
並んで歩いていたメンバーも足を止める。


「どうしたのー?」
「最後に買った固焼きせんべい、おつり100円だったっスよね?」
「足りないのか?」
「いえ・・・。あのおじいさん、間違えて500円玉くれたっス・・・」
「あー。・・・イイじゃん?もらっちゃえば。」
「そんなのダメっスよ!お年寄りから金巻き上げるなんて!!」
「別に巻き上げてないじゃん。」
「とにかくダメっス!!あああ・・・どうすればいいんスか・・・」


「・・・オレ、返してくる。」


アッシュの手から500円玉を取り、ジャックは駆け出した。


「えぇっ!?ジャック!?」
「すぐ戻る!!」





理由は簡単。
せんべいを売っていた店の奥に、とても大きな桜の木があったのを思い出したから。
もっと近くで見たかった。
少しでいいから、もう一度。

店のおじいさんにお金を渡し、100円のおつりをもらうと、
ジャックは走って桜の木を目指した。

























・・・やはり、他の木より一回り大きい。




息を切らしながら、幹の太さを見てそう思った。

口の中に湧き出た生唾を飲み込み、そっと・・・こずえを仰ぐ。
視界には、淡い薄桃色の色彩と、

少年。











それは動揺だった。












頭の上にいるのに、まるで気配がない。

目を閉じたら、どこにいるのかわからないだろう。

・・・それは

自分たちの、基本戦闘能力。


























「・・・驚いて声も出ないか。」




ガスマスクの下から発せられる、嘲笑を含んだ声。

隠されているその顔は、おそらく自分と瓜二つ。

いや・・・「同じ」顔だろう。














































「探したぜ。Z-73111。」







































































とりあえずここまで。

神&裏神登☆場
裏神の名前はヤモリ。漢字で書くと「夜守り」。にょひょひょひょ(謎)
2Pジャッくんいぇあ!!!
次の更新がこの話の続きかどうかはわかりません。
感想などいただけると更新早くなるかも!!
初めて文字の大きさ変えてみたんですが・・・どうでしょうか。
たまにはいいかもしれませんね。

読んでくださった方、ホントにホントにありがとうございました!!!



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