逃亡者が出たという話を聞いた時、

    ムリもないなという気が、なかったわけではない。

    研究者たちは、まさか飼い犬に手を噛まれるとは思ってなかったらしくて、

    言い合いになったり、責任をなすりつけあったりしていた。



    自分としては、そんなに驚くことではなかったから

    バタバタと走り回る研究者たちが、滑稽にさえ見えた。



    こんな世界から逃げ出したいと、思わない日はなかった。

    同時に、己の罪と現実が・・・思考する意識に突きつけられた。

    それがどうしようもない感情だということを思い知らされた。

    命は量産型で使い捨て。

    道具。












    でもどこかで

    いつもどこかで
































    救われる日が来るのを祈っていた。


































































「・・・オレは、その運命を信じたい。」



柔らかく言葉をつむぐ。

次元の歪みに堕ちて、生きているなどまずありえない話だった。
死ぬのなら、それでもよかった。

あの世界から逃げられるのであれば、なにもかもどうでもよかった。








でも、自分はこの世界に辿り着いたから。









・・・そして、この少年も。

何百体と存在する自分たちの中から、たった1人・・・この世界に来た。

何千・・・否、何億分の1の確率だろうか。

それは偶然で、必然で、奇跡で・・・運命なんじゃないだろうか。



































「もう、いいんだ。」

「・・・・・・。」





















人殺し。

暗殺者。

罪人という運命からは逃れられない。

その為だけに産まれたのだから。











・・・でも。

それでも。













































「ここでは、大丈夫だから。」

「・・・・・・。」








































たどり着いた。

出会えた。

たくさんの言葉。

たくさんの笑顔。





それはまぎれもなく、自分が自分として存在していたから。





一回きりの使い捨てじゃない。

部品だって取り替えられない。

どこにも代わりなんかいない。




ああ・・・なんて儚くて、愚かで、暖かな・・・込み上げるこの思い。

自分も他人も、この世にたった一人しかいないんだ。

きっと、そういう運命だから。





・・・だから。
























































「・・・だから・・・泣かなくてもいい。」
















































ジャックの言葉に、少年はハッ!として自分の顔に手をやる。
瞳からは、初めて流れ出した涙が・・・とめどなく溢れてきていた。


「・・・っあ・・・。」


あわてて手でぬぐうが、止まらない。
それでも、何度も何度も目をこする少年に、アッシュが歩み寄っていた。
ひざまずき、驚いた顔をしている少年の頭と背中に腕をまわし・・・包み込む。




「・・・辛かったっスね・・・。」




されるがまま、崩れるように身体を預けてくる少年の頭を、アッシュの大きな手が何度も撫でる。
アッシュの目元にも、涙が浮かんでいた。

次第に嗚咽が漏れ、しばらくすると少年は、アッシュに抱きしめられたまま・・・声を上げて泣き出した。
















「・・・よくがんばったネ☆」


いつの間に後ろに来たのか、スマイルにポンと肩を叩かれ、ジャックは我に帰った。


「なかなかやるじゃん?」
「・・・・・ありがとう。スマイル。」
「いやーンvvそんな面と向かって言わないでヨ!照れちゃうじゃんかーvv」


ばしばしと背中を叩かれ、わずかに顔をしかめるジャック。
スマイルは上機嫌で、顔を赤くしているジャックの髪をぐりぐりとかきまわした。


「や・・・やめろ!!」
「ヒッヒッヒ〜☆」
























ぎゃあぎゃあとじゃれあう2人を見つめる影が、夜空に2つ。





「ふふん。そろそろだなっ!!」
「マジでやるのかよ・・・。」


面白くてたまらないという笑みを浮かべるMZDに、
ヤモリはガックリ肩を落とした。


「・・・なんだよ、そんなにイヤなのか?」
「イヤとかイヤじゃないとかいう以前の問題だ!!
 本当にいいのか!?アイツまで引き込んじまってよ!!」


ヤモリが指差すのは、アッシュの腕の中で泣きじゃくっている少年。


「う〜ん・・・。まぁ、なぁ?」
「なぁ?じゃねーよ!!
 毎度毎度こんなふうに決着がつくワケがない・・・!!
 またアイツらの組織が攻め込んで来たら、どうするつもりなんだ!?」
「わーった!わーったからもう少し静かにしゃべれよ!聞こえちまうだろ?」


わめき散らすヤモリを押さえ、MZDは頭をかいた。


「神だから大丈夫、ってのはナシだからな。」


ギロリ、とMZDをにらみつけるヤモリ。
MZDは少し考えると、ニヤリと笑って言った。













「んじゃ、‘運命だから’大丈夫!ってことで。」

「・・・・・・。」




ヤモリは、もう何も言わなかった。




















































































  
いやいやいや・・・。

運命っていうと、なんか戦う運命とか、恋に落ちる運命とかいろいろありますけどねぇ。
そういうデカイ物じゃなくて、もう普通の、誰でも知っているようなところにあるのではないでしょうか。

たとえば消しゴム。
たとえばシャープペン。
たとえば家族。
たとえば友達。
たとえば、貴方とこのサイト。

貴方とポップンだって運命ではないでしょうか。
だって人間なんて腐るほどいるし、
ゲームだって吐いて捨てるほどありますからね。
そういう幸せな運命を感じて、生きていけたらいいなと。
語ってみました。

では、また次回。

もう少しお付き合い頂けると嬉しいですvv









前へ