ジャックが産まれる前の、ジャックが産まれた世界の話。 テラ編
「絶望してんだよ。」
アンダーグラウンドの一角、廃工場に住む技師、モグラ。
大きな工場の面積ほとんどは、
開発途中の人工生命体「エレクトロ」を構成する機械でいっぱい。
昼間は下町の整備工場で働き、夜は「エレクトロ」の研究に精を出す毎日。
ハタからは「頭はいいけど変わり者」という風に見られている。
頼まれると断れない性格なので、無愛想だけど人脈はある。人徳もある。
この世界で人間が生きていくためには、
肉体を捨ててロボットの体に意識を移し代えるしかないと思っている。
実際、荒廃した大地が蝕んだたくさんの生命の中に人間が含まれてないわけがなく、
アングラに住む人々のほとんどが、マトモな体で産まれてくることができない。
出生率も低く、平均寿命は40代という現実、環境の悪化は止まらない・・・
このままでは人類が滅びるのは必至だった。
なんとか自分の周りの人々だけでも生き残ってほしい、という一心で
「エレクトロ」の開発に没頭する。
仕事仲間に、「機械になってまで生きるほど、この世界に価値があるのか?」
と聞かれることもしばしばあるが、その度に
「生きる価値ってヤツが本当にあるのなら、
それがなんなのか分からないまま死ぬなんて御免だ。
それこそ、なんのための「自分」だよ。」
と答えていた。
でも葛藤がないわけではないので、いろいろ悩んでる。
「エレクトロ」の開発に必要な部品&プログラムが
アングラでどうしても見つからないときは、
ティアマトとレイロンが属している研究所に忍び込んでパチってくる。(笑)
何度目かの進入のときに、研究体として連れてこられた人を逃がして、
自分の部屋に帰る途中のティアマトに遭遇する。
ギガの6つのアイ・ロボットも、彼の作品だったりして。
テラ世界の「地」のカルマを司っていた彼は、モレクの爆破時、
次元と次元の狭間に放り出され、
形を成し始めていたウィンディの核に取り込まれる。
が、爆発の衝撃で持っていたカルマがあちこちに放り出されたため、
ウィンディの核となっているのは、ほぼ抜け殻。
彼自身の意識は消滅してしまっているが、魂は未だその中に囚われている。
「弐寺編ごちゃまぜ」のとこにある「生身のエレクトロ」は彼のこと。
飛び散ったカルマのうち、重力・引力を調整するカルマが、
たまたま近くを通りかかったタントの「箱舟」に落ち、
カプセルの中の胎児に取り込まれる。
瞬間、胎児は驚異的なスピードで成長をはじめ、産声を上げた。
いつからか、子供はその能力と運命から「グラヴィティ」と呼ばれるようになる。
「嫌悪してるだけ。」
自分の遺伝子を使用して人造人間兵器(ジャック)を
完成させた天才女博士、ティアマト。
その非の打ち所のない頭脳と論理的な言動で、
有無を言わさず自分の意見を通すことができる実力、
+口調と性格がかなりキツイのとで、研究所の中では常に孤立した存在。
だが、それは自分の弱さを相手に悟られないための手段。
唯一同じレベルで話ができるレイロンと仲が良く、
彼と2人で居るときには、笑顔を見せることもしばしばあった。
極度の暗所恐怖症。
寝つきが悪いので、常に寝不足。
自分の作ったクローンたちが、荒廃した世界を元に戻してくれることを願っている。
毒素の大気に耐え、細胞が損傷しても回復が早く、
人間と同じように考え、行動できる生命・・・
造った個体たちのほとんどは、今までのクローン兵器たちと同じように
命令と殺戮の快感だけを糧に存在し、それゆえに死んでいくだろうけれど
たとえ1体だけでも、自己の意識に目覚め、世界に手を差し伸べてくれるのなら、
それを産み出した意味はあるんじゃないだろうか。
自分でも、こんな自己満足で都合のいい理想、
叶う可能性なんて万に1つもないと思っていたが、
モグラに強く肯定され、勇気づけられると共に
彼の存在に、自分の本当に求めていた光を感じはじめる。
モレクが爆破されることを知り、モグラ、そしてレイロンと共に
捕らえられている人々、完成間近のクローン、
そして地下に隔離されている研究個体たちを逃がすため、研究所内を奔走する。
途中、モグラと引き離され、Dr.Dの作品が隠してある部屋に迷い込む。
そこで眠るアーミィと接触するが、彼を解放する作業中に大規模な爆発が発生、
帰らぬ人となる。
「これが素だ・・・。」
のちのボルテージ。
モレク研究所の中で、ティアマトと1、2を争う実力者。
薬学、脳医学が専門で、強力な大量殺戮効果をもたらすウイルスと、
人間の脳の破壊衝動を発生させる部位の研究をしている。
働いている部署は別だが、ティアマトと仲がいい。
実際、人を殺す&壊すための研究はなぁなぁに済ませており、
研究体として施設に強制連行されて来た人々を治療し、
できるだけたくさん施設から逃がすことに全力を注いでいる。
最初にそれを始めたのはティアマトだったが、のちにレイロンがそれを知り、
「そういうことなら俺の部署の方が上手くやれる」と、秘密の片棒を請け負った。
性格は比較的温厚。冷静で冷淡。
ティアマトへの気持ちは日々募っていくが、
結局最後まで、それを告げることができなかったことを、
「ボルテージ」になった今でも後悔している。
モレク爆破事件の際は、モグラとティアマトに人々や研究体の救出を任せ、
メインルームで研究所内に仕掛けられた数百個の爆弾の解除にあたっていた。
別行動のモグラやティアマトとも、しばらくは連絡を取り合っていたが
コンピューターも徐々に侵され、途中から連絡が取れなくなる。
ほとんどの爆弾を解除したが、2重、3重のトラップを察することができず、
苦しくも彼の操作が一番大きな爆発を発生させてしまう。
爆弾に一番近い場所に居たが、奇跡的に即死を免れ、ホリックに拾われた。
「ボルテージ」となり、次元の狭間でホリックと過ごすようになった後も、
なにかとテラ世界のことを気にかける。
ジャックやシエルが次元の狭間に放り出された際も、ティアマトの遺志を汲んで
安全なポプ世界への道を開いた。
「人間の定義とはなんじゃ?人の腹から産まれてきたことか?
生きている定義とはなんじゃ?心臓が動いとることか?
ならば、今のワシはなんと呼ばれるのかのう。」
モグラの廃工場にちょくちょく現れる謎の老人、Dr.D。
モグラの才能と根性を高く買い、エレクトロの開発に惜しみなく力を貸す。
本名を名乗らず、わけの分からない話を延々と語る老科学者に
最初は警戒を隠せないモグラだったが、その知識と経験、
技術と腕に驚かされ、自分の腕の未熟さを思い知った。
共に過ごす時間が長くなるにつれて、尊敬の念さえも抱くようになる。
その正体は、モレク研究所の元トップメンバーの1人、ドレイズ博士。
最初は生物兵器、および大量破壊兵器を生産する目的で
研究所を立ち上げたが、その研究は自分が、そして今の人間が
やるべきことではないと感じ始め、別の研究に没頭し始める。
結果、ティアマトよりも早く、人工的に「ヒト」を造り出すことに成功。
それを「兵器」にするよう、研究所の上役に指示されたが、断固として拒否。
反逆者として「処分」されるところだったが、命からがら逃げ出して
アンダーグラウンドに転がり込む。
モレク研究所としては初めて成功した「人造人間」は、仮死状態のまま
研究所の地下の1室に隠してある。
アングラに来てからは、人間の意識をプログラム化する研究を進め、
息を引き取る直前、自分の身をもってその研究を完成させる。
肉体を失い、プログラムの状態で存在し続ける・・・
つまり、電脳世界で「生きる」ことに成功した彼は、研究所に残してきた
「息子」の元へ向かう。
仮死状態の体に、電脳世界内で造った「意識」を入れ、
リアル世界と電脳世界、両方で活動できるようにしてやる!と、
一心不乱に準備を進めていたが、
途中、モレク研究所が爆破される情報を手に入れる。
自分は研究所が爆破されても痛くもかゆくもないし、
秘密の地下室は壁とかすごい丈夫だし、防弾ガラスとかだし、
まぁ大丈夫じゃろーとか思ってた。
実際大丈夫じゃなかった。ティアマトは少年の身体をかばって死んでしまう。
電脳世界の住人となってしまった彼は、
ただその様子を見ていることしかできなかった。
ウィンディが活動を始めるまでの20年、電脳世界の中で少年の意識を育てる。
少年のコトはあえて「少年」または「息子」と呼び、名前は特に付けなかった。
ひょんなことでアーツと知り合い、少年の身体をあの部屋から開放することを
条件に、ウィンディへの引き抜きに応じる。
前々から不穏な影を感じていた彼は、その影に自分の意識や知識が
奪われることを恐れ、次に少年が自分のことを必要とする時まで
プログラムとしての機能及び全活動を停止することを決断する。
アーツは少年を、弐寺世界で仕事中のユーズのデスクへいきなり投下。
曲の打ち合わせの最中にいきなり落ちてきた少年に驚いたユーズだったが、
特に暴れることもなかったので、わりと平和な第一印象。
名前がない、と言う少年。
じゃあ、とりあえず打ち合わせしていた楽曲のタイトルでいっか。
楽曲の名前は、「VJ ARMY」。