「うーん・・・・」



食後、使った食器を洗いながら、アッシュは首をひねった。

どうも、スマイルの様子がおかしい。

どこがおかしいのかと聞かれても具体的に答えられないのだが、とにかくおかしい。
おかしいのだが、原因もなにもわからないから、どうしたらいいのかもわからない。
首をかしげるしかなかった。



「放っておけ」
「はへっ!!?」


いきなり声をかけられ、洗っていた皿を落としそうになる。
振り返ると、いつのまにかすぐ後ろに来ていたユーリが、
テーブルの横の窓をあけていた。


「ユーリ・・・。」
「・・・問題は無い。おそらくな。」



窓の外を見たまま、言葉をつむぐユーリの視線を追って、アッシュも外を見る。
城の裏の小高い丘を、ジャックが小走りで越えていくのが見えた。














































「・・・ストップ。そこまでだヨ。」



裏口から出て行ったスマイルを追って、ジャックは森に入っていった。
小さな丘を越えてしばらく歩くと、唐突に、上から声が降ってきたのだ。

声がした方を見上げると、スマイルが木の枝に座り、遠くを見ているのがわかる。

細身の黒いジーンズに、黒のスニーカー、黒のハイネック。
城の中では気にならなかったが、
芽吹き始めた新緑の森のを背景に、まるで一羽の烏がいるようだった。






「スマイル・・・」

「・・・そのコ、狙われててさ。」





自分を見上げてくるジャックに、前置きもなく、スマイルは話し始めた。




「なんでそうなったかなんて覚えてないけど。とにかく狙われてた。」

「・・・・・・。」







当然、守り抜く自信はあった。



そのコは人間で、そのコを狙ってるヤツらも人間で。
自分は透明人間だったから。
そのコを背中にかばい、闘った。


最初は余裕だった。

でも人間ってけっこう卑怯でさ。
やろうと思えば、わりとなんでもやれるんだよネ。



闇討ちとか。おとりとか。






「‘ボクより先に、キミを死なせはしないから‘」






あの時、そう言ったんだ、ボクは。

とは言っても、死ぬ気なんてこれっぽっちもなかったんだ、ボクは。

キミを守り抜いて、ボクも生きて、





2人で。













「・・・でもネー。死んじゃったんだ、そのコ。」


下を見なくても、ジャックが眉をひそめたのがわかる。
スマイルは続けた。



「追手に殺されたんじゃない。・・・自分で。」






ボクを、守るために。




















「・・・ちょっと、思い出して、ネ。」


ガサ、と枝を揺らして立ち上がり、スマイルは地面に飛び降りた。
ばつが悪そうに、自分を見上げてくるジャック。



「大丈夫だヨ。もう何十年も前の話だし。」


まだ調子が戻らないが、笑顔を作ってみせる。
が、それでもジャックの表情は曇ったまま。




「・・・変だ。」




しばらく黙っていたが、ポツリとつぶやくジャック。


「なにがー?」


わざと、軽く聞き返す。












「・・・スマイルが笑ってないと、なんか変だ。」













困ったような顔で自分を見上げながら、ジャックが言った。

起きた時から張り詰めていたなにかが、小さな音をたてて切れた。
同時に、体の奥から熱いものがふきあげる。

抑える必要は無い。

そのまま、こみ上げてくる笑いを。



「ヒヒッ・・・ヒッヒッヒッ☆
 そう来るかー!ジャッくんは!!」




いきなり笑い出した自分に、ぽかんとしているジャックの頭をポフポフとたたく。


「・・・??」

「ヨーシ!!城まで競争だァーー!!!
 ジャッくんが負けたら、今日のオヤツはボクがもらうからヨロシク!!」



先に走りだしながら、親指を立てて笑ってやると、
なにっ!?という顔をした少年が、あわてて走り出すのが見えた。












 いつからか、キミがいない現実に、慣れた。

 でも、キミを忘れたわけじゃないから。

 今度こそ、奪われないように。

 今度こそ、守りきれるように。




 ボクは。















走りながら、視界の下半分がにじんできた。

でも、胸は痛くない。

・・・あったかい。



帰ったら、またみんなの中で笑えるから。







あふれる前に、袖でぬぐう。
もちろん、後ろを走るジャックに気づかれないように。
















  (早く帰って、ユーリとアッシュに笑ってあげなくちゃ。)

































































終わりかた微妙・・・。

思いついて書き終わるまで3時間半(笑)
いやー。
ピンチのときに、スマにそんなこと言われたら鼻血出るだろなーと思って。ええ。
スマとユーリさんは過去に恋人といろいろあったんじゃないかと。
スンマセン。軽く流してください;;

軽くブラウザを閉じて戻って下さい・・・。








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